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第3回「キャリア意識欠如と対話不足が、組織課題を生む理由―離職・ミスマッチ・モチベ低下の根本はどこにあるのか

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1. はじめに──個人の問題ではなく、組織構造の問題です

多くの企業が抱える離職、モチベーション低下、ミスマッチ採用。これらはしばしば「若手の主体性」「最近の価値観の変化」といった個人要因に原因があると語られます。

ところが実際には、問題の本質はそこではありません。

キャリアに関する“構造的連携不足”こそが、課題の核心です。

社員がキャリアをどう捉え、組織がキャリアをどう扱うか。その2つが噛み合わないまま運用されると、どれほど制度を整えても組織力は強化されません。

2. 組織で起きている問題の源泉は「キャリアの扱われ方」にある

次のような現象は、すべて同じ根にあります。

  • 業務と人材配置が“経験の積み上げ”でしか語られない
  • 社員が自分の役割や価値提供を言語化できない
  • 研修はあるが、運用フェーズの対話が欠落している

これらはすべて、キャリアが個人の問題として孤立し、組織の戦略とつながっていない状態を示しています。

キャリアは本来、個人の人生観 × 組織の役割期待 × 事業戦略が接続されて初めて、力を発揮します。

ここに接続ポイントがないまま運用が続くことで、構造的なズレが積み重なります。

3. キャリアは「個人的である」と同時に「役割として社会に接続される」

キャリアは確かに、極めて個人的なものです。人生観・価値観・経験・関心・行動パターン。個人の中にあるそれらがキャリアの土台になります。しかし一方で、組織に所属する以上、キャリアは“役割”として機能します。

社員は、「自分の価値観・能力」を「組織に求められる役割」にどう焦点化するかという課題に向き合う必要があります。この“焦点化”を支えるのが、組織側のキャリア支援であり、マネジメントの対話による橋渡しです。

4. キャリア課題がなぜ「構造的問題」となるのか

理由はシンプルです。

個人はキャリアを自分で語れず、組織は役割の期待を言語化しておらず、そして両者をつなぐ対話がほとんど存在しないからです。この三つ巴の状況こそ、構造的ゆがみとなり、ここから、典型的な問題が連鎖的に生まれます。

5. 日本企業で特に顕著に見られるキャリア課題(行動傾向にもとづく)

組織支援の現場でよく観察される“傾向”として整理します。

① 役割よりも“客観的職務経験”で語られる組織文化

多くの日本企業では、キャリアを「経験年数」「所属した部署」で説明する文化が根強くあり続けています。

  • 「この部署で〇年いた」
  • 「○○部署に所属してきた」

これは必ずしも悪いことではありませんが、経験の羅列が、価値提供の説明とイコールではないことが問題となり得ます。役割の再定義がなされないため、新しい事業戦略に合わせた人材配置も難しくなります。

② 管理職のキャリア支援能力が“属人的”に形成されている

ここでのポイントは、「属人的=悪」ではないことです。

むしろ、マネジメントはある程度個性が出るものではありますが、問題は別のところにあります。組織として求められる“役割の言語化”が十分に提供されていないため、上司が“自分の経験”をもとにしか部下のキャリアを語れません。

結果として、支援の質が上司の個性によって大きくぶれる現象が起きます。これは個性ではなく、構造の課題です。

③ 社員が「組織の役割期待」を察する文化

日本企業では、阿吽の呼吸が美徳として根付いてきました。しかしキャリアの領域においては、察する文化は沈黙の連鎖を生みます。

▶社員:役割期待が明確に聞けない → 不安 → 自己理解が進まない

▶上司:部下の希望が聞けない → 配置の判断材料が不足 → 短期的な業務都合で人材配置

こうして、組織が本来持つべきキャリアの透明性が失われます。

6. 離職・ミスマッチ・モチベ低下は“症状”であり、原因ではない

離職の増加、ミスマッチ採用、社員のモチベーション低下。これらはすべて結果として表れている“症状”です。原因はもっと深いところ、つまりキャリアの扱われ方が組織構造として未整備であることにあります。

この構造が放置されると、組織は次のような循環に入ります。

  • 人材が育ちにくい
  • 戦略と人材が噛み合わない
  • 社員がキャリアを描けない
  • 組織が変わらない

この循環は、制度だけでは止まりません。必要なのは、制度を運用する対話の質です。

7. キャリア支援の本質は「個人と組織の思考構造を接続すること」

キャリア支援とは、個人の人生観を深掘りし、組織の役割を言語化し、その二つを接続する「思考の橋」をつくる営みです。特定のメソッドに頼るのではなく、個人・組織それぞれの内部構造を理解し、それを重ね合わせることこそ本質です。

8. 組織がこの構造的問題を乗り越えるためには

ここで大切なことは、派手な改革ではありません。

必要なのは、“役割を軸”にキャリアを再定義し、それを対話によって日常に流し込み、継続的にアップデートする文化の形成です。

キャリアとは、人生の文脈を含んだ概念。
だからこそ、組織も人生の変化に合わせて構造を更新し続ける必要があります。