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自己認識力が変えるキャリア開発の地平──組織の「問いを持つ力」が未来を拓く

2025.6.8 インサイド・アウト

★★★『唯一無二の自分を極める。』自己実現キャリアブログ for Business★★★

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はじめに:キャリア開発がうまく機能しない理由

キャリア支援を強化しているのに、成果が見えにくい。
育成体系を整えたはずなのに、社員の自律性が高まらない。
「やりがい」や「働きがい」を重視しているが、離職率が下がらない──。

こうした声は、決して一部の企業に限ったものではありません。
そして、その多くは「施策の設計」に目を向けます。
けれど、問題の本質は“そこではない”可能性があるのです。

本稿で掘り下げるのは、企業のキャリア支援における「構造的盲点」です。
それは、組織そのものが“問いを持つ力”を失っているという事実

社員に自律を促す以前に、組織自体が自らを内省し、対話し、問い続ける構造を持っているのか──
この「組織の自己認識力」こそが、持続的なキャリア開発と変革の要であり、
本質的な意味でのインサイド・アウト型経営の出発点なのです。

※「インサイド・アウト(Inside-Out)」とは、「内側(内省、信念、文化、動機)から変革を起こし、それが外側(行動、成果、社会的影響)に波及する」というアプローチを指します。

自律を支えるのは「内発的問い」である

キャリアの自律とは何か?
それは、「こうなりたい」「こう生きたい」という問いを持ち、自ら道を切り拓いていく力です。

しかし、問いは外から与えられるものではありません。
誰かに「あなたのキャリアを考えましょう」と言われて、すぐに問いが生まれるわけではないのです。

では、問いはどこから生まれるのか。

答えは一つ──安心して問いを立てられる場”の中でこそ、人は問いを見出すのです。

組織にこの場があるかどうか。
それが、キャリア開発の成果を左右する分水嶺になります。

「問いの場」がない組織に起きること

企業でよく見られるのが、以下のような構造です。

  • 面談はあるが、「評価とセット」で「振り返り」に終始している
  • キャリア研修は「講義型」で、対話や内省が形式的
  • 管理職はキャリア支援の重要性を理解しつつも、時間的余裕がなく、後回しにされがち
  • 「キャリア」という言葉自体が、現場では避けられる風潮がある

これは、「問いを持つ力」が個人任せにされている状態です。
人は、「キャリアを自分で考えよ」と一方的に言われても、考える術を持ちません。

大切なのは、問いを促す環境と文化を組織全体で育てていくこと
その責任は、組織にあります。

組織の「自己認識力」とは何か

ここで本稿の核心に進みましょう。
組織の自己認識力とは、次の3点で定義されます。

  1. 自分たちの現在地を、構造的・感情的両面から捉える力
  2. 未来に向けた問いを自ら立て、それに挑む意思を持つこと
  3. その問いを、上下左右の関係性の中で開かれた対話に変える文化を持つこと

この力がなければ、キャリア開発も、イノベーションも、真の意味での組織変革も実現しません。

では、どのようにこの力を育むか?
それこそが、経営の課題としてのキャリア開発における「問いの再設計」なのです。

組織文化と問いのデザイン──「構造的対話」が鍵となる

問いを持つ文化を育むためには、構造的な「対話の場」の設計が不可欠です。
ここで言う対話とは、「雑談」や「報告会議」ではありません。
あくまで、「価値観」や「動機」、「葛藤」や「迷い」に踏み込む対話です。

たとえば、以下のような問いは、非常に力を持ちます。

  • 「この会社で、私は何を成し遂げたいと感じているのか?」
  • 「会社の理念と、私の働く意味はどこで交差するのか?」
  • 「最近、どんな時に“らしく”いられたか?」

これらの問いを定期的・意図的に扱う場を設計すること
そして、マネジメント層自身がその対話を“する側”に回ること。

この構造設計こそが、問いを自律的に生み出す風土をつくる、キャリア開発の中核的施策となります。

形式的施策に陥らないために:問いが浸透する三層構造

問いを文化に変えていくには、以下の三層が必要です。

  1. 制度化された問い
     キャリア研修や面談に組み込まれた問いのデザイン。例:「今後どんな成長を望むか」「越境経験から何を得たか」
  2. 現場での問い
     上司・部下間の1on1で使われる問い。例:「この仕事に“自分らしさ”はあるか?」
  3. 対話の問い
     組織横断で語られるべき問い。例:「私たちはどんな未来を創ろうとしているのか?」

この三層を連動させることで、問いが“場”から“文化”へと昇華します。

経営者・人事が担うべき役割

組織の問いは、自然には生まれません。
だからこそ、誰かが「問いの火種」を守り続ける必要がある。
それが、経営層であり、人材開発に携わる方々の役割です。

  • 経営理念とキャリア支援の文脈を接続する
  • マネジメント層に対して、問いを立てる力を育てる
  • 「社員の声を聴く」だけでなく、「一緒に問いを立てる」土台を設ける

こうした一歩一歩が、表層的な施策ではなく、組織の“深層”を変えるキャリア開発へとつながっていきます。

おわりに:問う力が、組織の変化と未来をつくる

“答えのある時代”は終わりました。
今、必要なのは「問いを持ち続ける組織」です。

その問いが、社員のキャリアと接続されるとき、組織は進化します。
自己認識力の高い組織は、自律を生み、挑戦を生み、そして信頼を生みます

キャリア支援とは、組織が自分自身と向き合う勇気を持つこと。
そして、問いを共に生きる文化を育てること。
その先に、「選ばれる組織」「持続可能な経営」は自然と立ち現れるのです。